コラムVol.21 投資信託、いつ換金したらいい?

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古徳 佳枝 (ことく よしえ)
東京大学卒業後、日興證券に入社。投資信託・投資教育業務等に携わった後、2002年退社し、東京大学大学院にて「大学におけるパーソナルファイナンス教育」に関する研究を行う。その後、野村アセットマネジメントに入社、投資信託のセミナー講師等を担当。2011年同社退職後は、金融経済教育インストラクターとして、大学生・高校生向けの金融経済教育の講師や確定拠出年金導入企業の社員向け説明会の講師等を中心に活動している。

投資信託の換金を考える理由にはいろいろ考えられますが、ここでは大きく分けて、「マーケットの変動」と「自分の状況の変化」の2つに分けて、換金についての考え方を整理してみましょう。

マーケットの変動に対応した換金はうまくいく?

「保有する投資信託が大きく値上がりした」「目標を達成した」と利益確定のため換金するケースが考えられます。逆に「損失が生じているが、これ以上の損を増やさないため」換金するケースもあるでしょう。いずれも以前よりもマーケットが上昇したから、また今後マーケットが値下がりする前に、という換金の仕方です。では実際の投資信託において、マーケットの変動と換金には関係があるのでしょうか?

グラフ1は、追加型株式投資信託の月間解約額と日経平均225の推移を時系列でみたものです。追加型株式投資信託の中には、国内株式以外を投資対象とするものも多くありますが、ここではマーケットの動きを日本株で代替します。
2003年から2007年の夏にかけて、投信の月次解約額は増加基調にありましたが、この期間は日経平均が7,000円台から18,000円台へと値上がりした時期でした。その後、サブプライムローン問題やリーマンショック等による株価低迷時期を経て、2013年以降、日本株が上昇局面に入るのと歩調を合わせて、投資信託の解約も増えています。
投資家は「マーケットが上昇すると、保有する投資信託を換金する」という傾向があるようです。

グラフ1:追加型株式投資信託の月間解約額と日経平均225の推移(1999年1月〜2017年11月)
グラフ1:追加型株式投資信託の月間解約額と日経平均225の推移(1999年1月〜2017年11月)

ただし、これは一面的な見方に過ぎません。実はマーケットが上昇したときは、投資信託の換金だけでなく、購入も増えているのです。

グラフ2:追加型株式投資信託の月間設定額と月間解約額の推移(1999年1月〜2017年11月)
グラフ2:追加型株式投資信託の月間設定額と月間解約額の推移(1999年1月〜2017年11月)

グラフ2では、先ほどの投資信託の月間解約額をマイナス方向に示し、同じ月の投資信託の設定額(購入額)をプラス方向に示しました。多少異なるものの、ほぼ上下対称となっており、マーケット上昇時には投資信託の売りも買いも増え、マーケットの低迷局面では売買共に控えられているようです。「値上がりしたら売り、値下がりしたら買う」が理想ですが、「値上がりしたら売る」はできたとしても、「値下がりしたら買う」は難しく、実際は「値下がりしたら売買を手控える」傾向があるのではないでしょうか?
ですので、マーケットが値上がりしている時期に換金するならば、「換金した代金をその後どうするか?」も考えてみましょう。「投資せずに使う」「別の金融商品に移す」「値下がりまで待機する」と考えており、かつ保有している投資信託のリターンが当初目的を達成できたのであれば、換金も良いでしょう。

しかし換金代金で、すぐに似たような動きをする投資信託を買うのであれば、購入時手数料や解約時の信託財産留保額等のコスト負担が生じるため、以前の投資信託をそのまま保有していた方が結果的に良かったかもしれません。また換金後、投資をしなかったとしても「自分が換金した後でもっと値上がりした。もう少し保有しておけばよかった」と悔いるケースも見受けられます。

マーケットの変動だけで投資信託を換金することはタイミングリスクが伴う行為です。後悔しないためには、次項の「自分自身の状況」を勘案した上で、換金後のお金の行き先を考えてから換金しましょう。

自分の状況の変化に合わせて換金を考える

お金が必要になったから、と投資信託を換金するケースもあるでしょうが、急な資金ニーズに対応するお金は、別途預貯金などで保有しておくことが基本です。すぐにお金が必要だから、と慌てて投資信託を換金すると、タイミングによっては大きな損失が生じかねません。

長期運用の資金で投資信託を購入するのが原則ですが、その場合でも、時間が経過するにつれて、使用予定時期が近づいてきます。このとき、使用予定時期の数年前から、換金を意識し始めると良いでしょう。株式や外貨建て資産など値動きの大きい資産の投資信託の場合、使用時期直前に大きなマーケットの下落局面が訪れると、せっかくのこれまでの投資成果が大きく損なわれかねないからです。

購入タイミングを分散するのと同様に、換金タイミングも分散することで、タイミングによる価格変動リスクを抑えることができます。ある程度目標とする利益が達成されたと考えたら一部を売却し、残りは運用を継続します。また次のタイミングで一部を売却します。このように徐々に預貯金等の安全資産に移していくことで、そのお金を使用する時点ではマーケットを意識することなく、安心して引き出すことが可能になります。

「この投資信託、利益が出ているから換金しようかな」と思ったときは、改めて、その投資信託を購入した目的を振り返り、現在の保有資産全体の状況も確認してみて下さい。その投資信託への投資目的は達成済みですか?また、保有資産全体のバランスは、自分に合ったものになっていますか?

資産運用は、そのお金を使用する時期まで長期間継続する、マラソンのようなものです。短期的な利益獲得に一喜一憂するよりも、運用途中でも自分に合った資産配分が保たれているか、といったメンテナンスの方が重要です。
投資信託の換金については、マーケット変動だけを見て行うのではなく、自分自身の状況の変化に合わせて徐々に行っていくことが大切です。

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